一瞬にして零れ落ちる笑み。
「おいひぃ~」
ほっぺたが落ちるとはまさにこのことだ。
口の中でパイがサクサクと音楽を奏でる。
口の中いっぱいに広がる、バターの香りと、リンゴの甘酸っぱい味。
私はゆっくりと噛みしめながら、情けなく顔を綻ばせる。
「ふふっ、よかった。やっと元気出たみたいね」
「えっ……?」
不意を突かれて、フォークが更にかたりと落ちる。
向かいに座る椿のお母さんは、アップルパイには手も付けずに、私をじっと見ていた。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…