ただあの子になりたくて



とても用意がいい。

作業台の隅には、特大のホイップクリームみたいにお山の尖がったしぼり器と、レモンが寝そべっていた。

「ああ、うん、了解」

適当に真ん中あたりで切ると、すぐにしぼり器にかける。

今度は思い切り押しひねると、爽やかな香りが一気にあたりに広がる。

思わず鼻からいっぱいに息を吸えば、私はうっとりと目を閉じる。

爽やかな酸っぱさの中に、ほんのり混じる甘い香り。

鍋のくつくつとした音に、心は跳ねる。

自然と体は椿のお母さんの方へ吸い寄せられて、ひょっこりと鍋をのぞき込んだ。

ふわっと顔に押し寄せる甘ったるい幸せの香り。