ただあの子になりたくて



はっきりと見える、凸凹から急に滑らかになった個所。

私はこんなにも力を余計に込めて、空回りしていたのだろうか。

蘇る、拓斗の必死すぎて痛いという言葉。

的確でその言葉こそ痛いと思った。

本当のお母さんの前でうずたかく防御壁を張って、蒼介の前では好かれようと前に前に出ようと必死になって、まさにその通り。

なんだか、笑えてきそうだった。

だからさっさと皮を全部剥いて、誤魔化した。

やがて小気味よくスライスしたリンゴは、ボウルにたっぷりと満たされた塩水風呂に大勢で浸かっていた。

「ねえ椿、そこのレモンを切って、それで絞っておいてくれる?」

鍋をガス台にセット中の椿のお母さんは、首だけで振り返って私にお願いしてくる。