「無理やり剥こうとしちゃだめよ。力任せじゃなくて、優しくね」
私の手を、温もりに溢れた手が包み、ともに包丁を握る。
そして朗らかな声が、私の耳元で囁く。
「包丁は苦しくなようにそっと握って、リンゴに寝かせた刃をくっつける」
がちがちに固まっていた指が、不思議とふわり、ほどけていく。
私がもう一度ちらり横を見れば、太陽みたいに寛大な笑みに、心がくすぐったく温められていく。
突然のことに驚いているのに、促されるまま、不細工になったリンゴをもう片方の手で握る。
恐る恐る、リンゴに刃を立てないよう、柔い白い肌へそっと口づけさせるみたに触れさせた。
「うん、いいわ。包丁はそのまま。ゆっくりゆっくり焦らずに、実を回すの」
一つ一つ、言葉がしみ込んでいく。


