ただあの子になりたくて



もう一度飛び起きて、スマホを拾い上げると、迷いなく画面をタップした。

〈用事があって行けけないの。ごめんね〉

倒れたという言葉が視界の端に入ったけれど気にしない。

もう、私のお母さんではないのだから、関係のない話。

拓斗の言う通り、嫌なのに誰かに媚びる必要もない。

私は椿になって、自由になったのだから。

大きく深呼吸をして、いちにのさんで立ち上がる。

一気に飛び立ったみたいに、ふわっと高くなる視界。

ベッドに清々しく放り出されて跳ねるスマホ。

体が、嘘のように軽くなる。

さあ、今日も一日を始める。

私は今日も、腕と胸を大きく広げ、クローゼットを開け放った。