ただあの子になりたくて



まるで、この前までの自分を見ているみたい。

苦しいくせに、好きな人の前で取り繕って懸命に笑って努力する。

その努力が実らないことを当然知りながら、続ける無駄なこと。

ずっと握っていた紙のカップが、力のこもった指で少しつぶれていく。

拓斗にも言ってやりたい。

拓斗の好きな椿の、この口からは、どんなに歯がゆくとも言ってやれないのはわかっているけれど、唇はうずく。

そんな努力は無意味なのだと。

前の私と違って拓斗は、人気者でみんなの中心で輝く存在なのだから、脇役側なんかに来るなと言いたい。

脇役の惨めさを味わうのは、本当の私だけで十分だ。

思い起こしたら、目尻が濡れて、私は慌てて目を掻くふりをする。