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なすすべもなく力の抜けた手が、ソファーの上にべたりと張り付く。

こめかみにじわり浮き出る冷汗。

未だに拓斗の眼差しが私の肌をじりじりと焼く。

言葉を考えれば考えるほど、頭の中が白くなっていく。

まさか、椿の体に私が入っているだなんて魔法みたいなことに、誰も気づけるはずがない。

いくら勘のいい拓斗でも、考え付くはずがない。

でもならばなぜ。

何言ってるのと冗談を返す余裕すらない。

根負けして顔をそらせば、目は右往左往に泳いでしまう。