「いいよ。ごめんね、無理に聞き出したいわけじゃないんだ。力になりたかっただけでさ。ごめん」
「ううん、私こそ、ごめん」
槙野くんが素直に私に気持ちを吐き出してくれているのに。
なのに、私は何も教えないなんてフェアじゃない。
だけど、やっぱり教えたくない。
槙野くんにこのドロドロとした醜い感情を知られたくない。
「でも、いつか藤さんが耐えきれなくなってどうしようもなくなった時は僕を頼って。ね?」
「……うん」
ふんわりと目を細める槙野くん。
それに私も自然と笑顔で頷いていた。
「教室着いたね」
「待ってて、見て来る」
中に入るとすぐに自分の席へ駆け寄った。
教科書、やっぱり入れっぱなしだったんだ。探し物はすぐに見つかった。
「あった」
「そう、よかった」
「よし、里緒待ってるし、急いで帰ろうか」
「そうだね。家に帰ったら母さんのお菓子が出来上がってるかもしれないし」
「それは楽しみだ。早く帰ろう」
「はは、うん」
そうやって私と槙野くんが急いで槙野くんの家に到着した時、玄関先に停めていた里緒の自転車がなくなっていた。
それを不思議に思いながら家へと入ると、里緒の靴までも消えていた。



