「本当に、藤さんには敵わないや」
「何で?」
階段を上がりながらそうやって言った槙野くん。
私、何かしたのかな。わかんない。
「藤さんは僕が悩んでいる事、全てを肯定してくれる」
「そう?そんな大層なことしてないよ」
「ううん、してるよ。どんな僕でも受け入れてくれてるじゃないか」
「そうかな」
自分では自覚ないんだけどな。
「藤さんは悩みとかないのかな」
「悩み?」
「うん。僕ばかりいつも聞いてもらってるでしょ?
藤さんの気持ちが少しでも軽くなればいいなって思ってさ」
「私、悩みなんてないよ~。友達皆大好きだし、陸上も楽しいもん」
「そんなわけないよ、悩みのない人なんていない」
「…………」
そうハッキリ断言した槙野くん。
多かれ少なかれ、皆悩みを抱えているって私もわかっている。
あいつって悩みなさそうだよね。とかたまに聞くけど、そんなの絶対にないって私は思ってた。
私の悩みは、そんな簡単に話せる事じゃないんだ。
例え槙野くんだろうと、里緒だろうと。
この悩みはきっと一生私につきまとう。
お父さんが紗奈さんと離婚しない限り。



