君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】


ここが槙野くんの部屋。
今更、緊張して来た。



「座って。勉強しようか」

「お邪魔~。はあ、勉強ダルイ」


里緒が早々に座るのを見てから、私は遠慮がちに里緒の隣に腰をおろした。


「何からやる?」

「ん~数学教えて。全くわかんないから」

「わかった」


槙野くんの問いに里緒が返事をしながら机に教科書を広げた二人。
私も慌てて教科書をカバンから取り出そうとした。
……が。


「教科書持ってくんの忘れた」


どうやら数学の教科書を学校に置いて来たらしい。



「あはは、ウケるんだけど」

「もう、里緒笑わない。いいよ、取ってくる」

「えっ、取りに行くなら僕も一緒に行くよ」


そう言って立ち上ろうとした私に槙野くんがそう声をかける。
私は槙野くんに首を振ると「近いし平気」と言った。


なのに、槙野くんは頑として譲らない。


「ダメ。僕も行くから」

「う。でも、里緒一人になっちゃうし」

「いいよいいよ、二人で行っておいで。待ってる」


言い訳のように言ったけど、逆に里緒に行って来いと言われてしまったらもう断る術がない。
諦めて私は「お願いします」と槙野くんに軽く頭を下げた。