君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】



「母さん、お菓子作りが好きなんだけど……僕、甘いの得意じゃないからさ。
父さんも好きじゃないし。ママ友も多い方じゃないし、地元も違うから作る相手いなくて。
だから、嬉しいと思うよ」


槙野くんの話を聞いて私と里緒は顔を見合わせる。
一度アイコンタクトを取ると、私は口を開いた。


「じゃあ、また来てもいい?」


それに驚いたようで槙野くんは目を真ん丸にしている。


「ね。そんな話聞いちゃったらまた来ないと!てか、お菓子目当てって感じ?」


里緒もあははって笑いながら舌を出しておどけてみせた。
私達の言葉に顔を綻ばせた槙野くんは、大きく頷いた。


「うん。また来て」


槙野くんの部屋は想像していたけど、一人部屋としては広かった。
本棚には本がびっしり詰まっていて、カーテンやシーツなどは落ち着いたグレーで統一されていた。

なんか、……部屋が凄く大人だ。


「もっと汚いかと思ってた~。意外」

「そう?部屋にいる事が多いから、綺麗にしているかな」

「なるほど」


里緒と槙野くんが会話しているのを聞きながら、私はじわじわと足先から緊張が這い上がってくるのを感じていた。