君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】



「ね、槙野くんのお弁当ってお母さんの手作り?」

「うわ、美味しそうじゃん。いいな、槙野」


被せるように感嘆の声を出す里緒。

里緒のこういうところ、本当に好きだ。
理由を問い質す事なく、私に合わせてくれる。


きっと、私を信じてくれているから。
その理由もなんとなく里緒なら察してくれているに違いない。



「え、うん。手作り」


槙野くんは動揺しながらも答えてくれた。


「いいなあ~。うちなんて作ってくれないよ。いつもパン。たまには手作り弁当食べたい」


里緒は訝しげな顔で残りの焼きそばパンを口一杯に頬張った。
確かに里緒はいつもパンだ。

たまにパンに飽きるのかコンビニのおにぎりだったりするけど、それでもお弁当ではない。


「パンも美味しそうだけどね。僕は購買で一度買ってみたい」


クスクスと里緒の言葉に笑う槙野くん。