槙野くんは驚いた顔で私を見上げている。
机にはお弁当箱を広げていた。
私には里緒がいる。
例え里緒がいなかったとしても、きっと誰かしらとご飯を食べていると思う。
違うクラスに行って陸上部員とかも。
でも、彼にはいないんだ。
「一緒にお昼食べよう」
「え」
私はそう槙野くんに言うと、自分の席に戻って自分の机にあるおにぎりを手にした。
同じように驚いた顔をしている里緒に、
「あっち行こ」
と言った。
里緒は「え、あ、うん」と曖昧に答えながらも立ち上がり私の後に付いてくる。
槙野くんの隣の席と前の席は空いていたから、そこに私達は勝手に座った。
「さ、食べよ」
「…………」
槙野くんはまだ驚いているようで、目をぱちぱちと何度も瞬かせながら私を見ている。
それに気付いていながら私は違う話題を振った。



