君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】


「そんな事ないから」

「そう?槙野、ぽつーんと一人で座ってるから気になって」

「え。一人で?」

「うん。いや、一人で座ってるとか別に前と何も変わらないけどさ」

「…………」


おにぎりをもう一口食べようとしていた手が止まる。


そうだ。
槙野くんは一人なんだ。


いじめられているとかじゃないけど。
話しかける人もいるけど。
でも、それはすぐに終わってしまう会話。


変わろうとしていた槙野くんを止めたのは私だ。
止めたがっていた。

今の槙野くんを知りたいから。


そう思ったら勝手に体が動いていた。
私は立ち上がると槙野くんの机へと真っ直ぐに向かう。


槙野くんの目の前に立った時には、教室中から注目されているのがわかった。
それでも構わなかった。