君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】



そう変に意識してからは槙野くんの方を向けなかった。
顔が見られない。


休み時間になっても里緒と話すか、トイレに行くかでなるべく槙野くんを視界にうつさない様にしていた。
槙野くんがどんな様子だったかはわからないけど。


そうこうして昼休憩になり、トイレに行くと私は一度息をついた。
どうしてこんな避ける様な真似。
槙野くんを意識してドキドキしたのは昨日もじゃん。


今日は何が違うの?
わからない。
でも、今槙野くんに話しかけられたら顔が赤くなりそうだ。


普通に喋る事なんて出来ない気がする。
はあっともう一度息をつく。


すると、ケイタイが制服のポケットの中で震えた。
誰だろう。


どうやらメールを受信したようだった。
慣れた動作でケイタイをタップして私はメールを確認する。


「っ!」


私は息を呑んでメール画面を見つめた。


その相手は槙野くん、だ。
心臓がドクドクと早鐘の様に鳴り、一気にざわざわし始める。


『槙野くん』と表示されたそのメール。
ゆっくりとその名前に触れる。