私の陰になって見えなかったのか、里緒は目の前に槙野くんがいる事に驚いているみたいだ。
目をぱちぱちと瞬かせている。
「え、えっと~お邪魔だった?」
顔が引きつっているよ、里緒。
それに私より先に槙野くんが答えた。
「ううん、大丈夫。今話し終わったところ。
おはよう、長田さん」
「あ、え、うん。おはよう。そっか、ならもう瑠美子を連れてっても?」
「うん。平気。藤さん、また」
そう言うと、里緒が私の腕を強引に引っ張って自分の席へと連れていく。
槙野くんに返事する暇がなかったな。後でメールしておこうっと。
席に到着するやいなや、肩をがしっと掴まれ里緒に問い詰められた。
「何あれ。何あれは」
「え」
真剣な顔で迫られて、肩を竦める。
「えっと、えへへ」
笑って誤魔化そうと試みる。
だけど。
「笑ってないで答えて」
里緒は誤魔化されない。



