『もしもし?藤さん?』
ケイタイから聞こえる槙野くんの声。
学校で聞くよりも低く聞こえる。
当たり前なんだけど、耳のすぐ側で聞こえるからくすぐったい。
「そうだよ」
『よかった。突然ごめん。文字打つの慣れてなくって、電話の方が早いかなって思ったからさ』
「そんな風には見えなかったけどなあ。メール、普通だったよ」
『そう?ならよかった。すぐに送れなくてごめん。
どうメール打とうか、悩んでたらあんな時間になってた』
「そんな悩んでたの?」
『うん。でも結局あんな普通のメールだしさ。早く送ればよかったよ』
残念そうに呟く槙野くんに、ふふっと笑みが零れた。
それがとっても槙野君らしく思えたから。
『……なんか、いいね。電話って。近いや』
「え」
そうぼそりと言った槙野くんに、私は驚いた声を出した。
『藤さんの声が凄い近くで聞こえる。緊張する』
「……私も、同じ事思った」
ドキドキと心臓が早鐘の様に鳴っていた。
きゅうっと胸が苦しくて、どうしようもない。
まさか、同じ事を思っているなんて思わなかった。



