君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】



それから、教室に戻ると槙野くんはいなかった。
トイレかな?
然程気にせず自分の席に戻った。


……槙野くん、まだ戻って来ないな。誰も座っていない彼の席を何度も見てしまう。


気にし過ぎじゃん。私。
授業開始のチャイムが鳴り、次の授業の先生が入って来たと同時に槙野くんが扉を開けた。


目を真ん丸にしたまま彼を見つめる。
彼も私を見ていた。


バチっと視線が絡むと、槙野くんはニコッと笑ってすぐに席に着いた。
その一連の動作を私は微動だにせず見つめていた。


トクントクンと鼓動が速くなっているのがわかる。


何、今の。
私を見てニコッてしたよ!?


前髪で隠れている目が細くなって、柔らかい笑みを向けた槙野くん。


彼の笑顔にも驚いたけど、動揺している自分に一番戸惑っている。
何でこんなに心臓がドキドキいってんの??


流石に昨日の今日で意識し過ぎじゃない?

違う、きっとあまりにも今までの槙野くんと違うから戸惑っているんだ。


だから、ちょっとした事で動揺しちゃうだけだ。
うん、そうだ。きっとそう。