君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】



「ボク、おねーたんのごはんだいすき!」

「へへ、ありがとう。でも、私はほとんど紗奈さんのお手伝いだからな~」


千風の素直な言葉は嬉しかった。
だから、私はニコニコと千風を見ていたけど。


「おねーたんとボク、けっこんしたい!」


千風がそう言って、私は「私も千風と結婚する~」なんて冗談混じりに言っていた。

ただの子供の冗談。
こんなのよくある事だと思う。


可愛らしいなって思っていたし、本気になんか捉えていなかった。

だけど、紗奈さんは違っていた。



その翌日。
朝起きてリビングに向かうと、既に紗奈さんがいた。
だから、「おはよう、紗奈さん」と声をかけたのだけれど返事がない。


聞こえなかったのかな?そう思い、再度「紗奈さん」と声をかけると紗奈さんは笑顔で私を見る。



「どんな色目を使ったの?」

「え?」


色目?何の話?
最初何の事を言われているのか、わからなかった。


にっこりと笑っている紗奈さんの顔が怖い。