君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】



どう声をかけたらいいのか、わからないようだった。


だから、私から先に口を開いた。


「紗奈さん、思っていた以上に優しそうだね。
いいよ、紗奈さんなら」


私がそう言うと、お父さんはぱあっと花が咲いたように喜んだ。


「本当か?瑠美子が嫌なら再婚はやめようと思っていたんだ。
嫌じゃないか?」

「ううん、嫌じゃないよ。それに紗奈さんの子供も見てみたい」

「千風くんって言うんだ。可愛いぞ」

「へえ、千風くん。今度連れて来てって言ってね」

「ああ!すぐにでも連絡する!」


嬉しそうなお父さんの顔を見て、これでよかったんだって思った。
さっきの言葉に嘘はない。


紗奈さんは優しかったし、私も彼女とならうまくやっていけるんじゃないかって思った。
少しの不安はあったけれど、彼女の言葉を信じよう。