君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】



「真吾さん、それは今日は言わないって言ったじゃない」

「そうだったな、悪い悪い。だけど、早めの方がいいと思って」


お父さんは本当に悪いと思っているのか、カラカラっと笑っている。
紗奈さんは少しだけ頬を膨らませいた。

それから私に視線を移すと、

「そうなの、私には一歳になる息子がいるのよ」

と教えてくれた。


「そうなんですか」

「ええ、瑠美子ちゃんにとってみたらいきなりになるし、色々心の準備が出来てないだろうけど。
うちの人も、息子を妊娠して半年ぐらいしてから亡くなっててね」

「えっ」


紗奈さんの元旦那さんは亡くなっているの?
うちと境遇が同じって事?


「その時に支えてくれたのが真吾さんだったの」

「……そうだったんですか」


私はぽつりと呟くように言った。
妊娠中に最愛の旦那が亡くなってしまうなんて、どれだけの不幸なのだろう。