君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】



「瑠美子ちゃん。って呼んでいいのかしら。あのね、瑠美子ちゃん」


そう優しい声色を使う彼女の顔を私は見上げる。
目を細め、私に話しかけた。


「私、貴方の話を真吾さんからずっと聞いていたの。
会うのが本当に楽しみだったのよ。だから、今日をずっと前から楽しみにしていたの。
いきなりで驚かせてごめんなさい。
もっと早く言った方がいいってずっと言っていたのに、こんな形でお知らせする事になってしまって……」


申し訳なさそうに言う彼女。
私は口を噤んだまま、視線だけを伏せた。


「瑠美子ちゃんのお母さんの代わりにはなれないかもしれないけど……。
でも、お姉さんにはなれないかしら。って、お姉さんって年齢でもないかしら。
ごめんなさい。
いいの、すぐに返事出さなくて。瑠美子ちゃんがいいって思わないと私も嫌だから」

「……紗奈さん」

「ふふ、ありがとう。名前で呼んでくれるのね。嬉しい」


ふんわりと笑った彼女。
少しだけ私の張り詰めていた心が溶けていくように感じた。


「実はな、紗奈さんには一歳になる息子がいるんだ」

「えっ?」


驚いて紗奈さんを見る。この綺麗な人に子供がいるの?母親に思えない。
紗奈さんはすぐにお父さんを見ると、口を開く。