ひとしきり泣いた後、僕は藤さんのカバンからケイタイを取り出した。
本当はこんな事したくないけど。

でも、僕と過ごした期間のメールを消さないといけない。


いいんだ。藤さんに何も残らなくても。
僕が全部覚えているから。


大好きだっていう気持ちも、藤さんの気持ちも。


「ごめんね、藤さん」


全部の履歴を削除して、僕のメモリーをケイタイから消した。
ロックかかってたらどうしようと思っていたけど、何もなくて良かった。

藤さん、ごめん。
何度も何度も何度も僕は心の中で謝罪をした。


それから、藤さんを父さんの車に乗せて送っていく。
父さんは何も言わなかった。

今日実行するって事も、全て知っていたから。


ただ、黙って頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。
父さんの前で泣きたくなかったのに、涙が溢れてどうしようもなかった。


藤さん、僕は絶対に君にもう一度好きになってもらうから。


例え、藤さんの中から僕が死んでしまっても、藤さんは藤さんなんだ。
中身は変わらない。


最初に戻るだけ。