君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】



清楚なその女性は、私に「初めまして」と言った。
それにぺこりと一応頭を下げる。

誰なんだろう。
仕事先の人?でも、家に連れてくるなんて珍しい。


家にその女性を上げると、お父さんはリビングに私を連れて椅子に座らせた。
その前に女性と一緒にお父さんが座る。

なにがなんだかわからない私は、お父さんの顔をただ黙ってじっと見つめていた。


白髪混じりのお父さんは男手ひとつで私をずっと育ててくれた。
仕事ばかりであまり会話をしてこれなかったけど、それでも運動会とか学校行事はなるべく休みを取ってきてくれた。

兄弟もいなかった私は、一人で家にいる事が多くて確かに寂しさを感じてはいたけど不満はなかった。


お父さんはどこか話しにくそうに、言葉を詰まらせる。
その様子に首を傾げた。


「えっとだな。瑠美子、この人は紗奈さんというんだ」

「うん」


この人、紗奈さんっていうんだ。
一度紗奈さんに視線を移すと、紗奈さんは微笑んだまま私を見ていた。

それから、お父さんが続ける。