君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】



弟の千風は今、五歳。
私立の小学校を受験しようとしている。

それに紗奈さんはかかりっきりで、私は放っておかれていた。
まだ夏なのに説明会や、ママ友との情報交換に必死になっている。


まあ、構われても正直嫌だから私としてはありがたいのだけれど。


紗奈さんとお父さんが再婚したのは、四年前の事だった。
その時、私は中一だった。


珍しく仕事から早く帰宅したお父さんが、連れてきたのが紗奈さんだった。
最初、意味がわからなかった。


この人は誰なんだろう?
お父さんの隣に立つその女性は、綺麗な肩までの黒髪をさらりと揺らし微笑んでいた。
大きい黒目。真っ白い肌はまだすべすべで、お父さんよりもずっと若く感じた。
ふんわりとしたピンクの膝丈のワンピース。
白いエナメルのパンプス。
淡いパステルグリーンのノーカラーのジャケット。


―――綺麗な人。それが私の第一印象。