用意されていた朝食も取らず
髪もボサボサのまま遅刻ギリギリで出社。

「亀ちゃん」
隣の席の中岡が驚いた顔で出迎え
ぼーっと立ちすくむ僕の目の前に立ち
テキパキとネクタイを結び直し
スーツの乱れも直してくれた。

「いつもキチンとしている亀ちゃんがらしくないね。どうした?寝過ごした?」

「……うん」

「まぁそんな日もあるわな」
中岡は優しい声を出し
タラシの笑顔で僕を包み込むので
僕はこらえきれなくなって彼に抱きついた。

「ちょ……亀山っ!」

周りがザワついてるけど
僕は無視して中岡に身体を預ける。

「待て、落ち着け。俺はそっちの趣味はないから……って!おいっカメラを向けるなっ!」

パシャパシャとなぜかシャッターの音がして
「きゃーマジで?」「でもお似合い」とか耳に入るけど
そんなのどうでもいい。

スズメが居なくなるなんて。
あと一日あったのに。

きちんとお別れもいえなかった。
身体に力が入らない。

「亀?おい、頼むから離れてくれよ。掃除のおばさん達まで見てるし」
中岡の泣きそうな声にハッとする。

そうだ
お掃除のおばさん達。

僕は中岡を突き飛ばし
部屋を仕切るガラス越しに掃除のおばさんをロックオン。
そして走って
昨日までスズメと一緒に働いていたおばさんに詰め寄った。

「あのスズメは?いや、三ヶ月前からこちらでパートで働いている小畑鈴芽さんは、今日は来てますか?」

「あぁ鈴芽ちゃんね。あの子はいい子だったね。みんなに好かれて仕事も早いし、歴代パートの三本の指に入る子だ」

思い出すようにモップを持って話すおばさん。