最後の一枚は、机の上にあった。


これが貴方に対する領収書です。
全て読み終わりましたら、サインをお願いします。

わけもわからず、私はとりあえず、紙にサインをした。

その時、彼の着けていた腕時計が鳴り始めた。

サインヲ確認…インストールヲ開始シマス…
ジジジジジ…ジジジジジ…ジジジジジ…

暗闇の中に響く、低い音。
それはとても不気味なように思えた。

ジジジジジ…インストール中…ジジジジジ

インストール?なにをインストールしているんだ?

腕時計に点滅している数字が減っていく。
…この数字は何を意味するんだったっけ。

腕時計を見つめていると、彼は大事なことを思い出した。
あぁ、そうだ、思い出した。
私には娘がいたんだった。

そうだ。
昨日は、娘の葬式だったんだ。
そうだ。

だんだん思い出してきた。
猫、娘が大切にしていた、真っ白な猫。
俺が捨てたんだ。

ドレッサーの中身。
あれは娘のドレッサーだ。
娘のドレッサーの中身を、私が売ったんだ。
あの指輪も。
一番、金になった。

給料、あれは娘の初任給の日。
俺が全部奪ったんだ。そうだ。

体…は何のことかわからないが、その後もずっと俺は、娘のお金を奪ったんだ。

私…。これは娘のことだ…。