放課後。


辻崎は部活があるからと早々に教室を後にした。

俺はというと、特に教室に残る理由もなければ早々に帰宅する理由もないので、のんびりと帰り支度を済ませる。




「あ、鶴くんバイバーイ!」

「おー」


「鶴長先輩、さようなら」

「んー」



正面玄関にある靴箱に向かうまでに何人かに声をかけられる。愛想を振りまく甲斐性もないので、適当に返事をしてその場を去る。


少し時間差で教室を出たからか、いつもは下校する生徒で溢れかえっている靴箱も今は人が少なかった。



「………あー」


しまった。
靴箱の鍵を教室に忘れてしまった。