「橋本先輩だけじゃなく鶴までとられたら……って焦ってんだろうな」
「別に興味ないんだけど」
「それでも、だよ! ったく女ってのは本当に怖いぜ」
あーやだやだ、と顔をしかめながらやっと自分の席に戻って行った辻崎を見ながら、俺はまた一つ溜息をついた。
『西宮 琴』
嫌でも耳にこびりついてしまったその名前を脳内で復唱し、再び机に突っ伏す。
目を覚ました頃には授業の始まりどころか終わりであったことは不覚だった。
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