「あっおい!  つまんねー顔してんじゃねーよ!  これはビッグニュースだぜ!」

「どこがだよ」

「あのなぁ、ちったぁ考えろ!  あのイケメンと名高い橋本先輩に告白されたんだ……全校の女子が黙ってるわけねーだろ!」


辻崎は大袈裟にぶるりと体を震わせる。


「……まず西宮ってだれ」

「やっぱ知らねーのかよ!」

「知らない」


まぁ鶴が知ってるわけねーよな……なんてガックリしながら呟いた辻崎だったが、すぐに目を爛々とさせ俺に向き直った。


「西宮……西宮琴さんってのはな?
一週間前に隣のクラスに転入してきた女の子だよ!」

「ほー」

「もうお人形みたいに可愛くってさ!
俺はまだ話したこともないけど、今や全校生徒の注目の的よ! その分女子からのやっかみもすごいけどな! おーこわ!」


辻崎は延々と『西宮さん』について語る。

正直後半に差し掛かると聞いていなかったが、辻崎の情熱的な演説から相当な美少女ということは把握出来た。


そろそろ唾が飛んで来そうだ、と机にだらりと寝かせていた体を起こした所で、目の前に影がかかったことに気付く。