面倒ごとは嫌だっていうのに、なんだこれ。
……いや、それなら昨日も見て見ぬ振りすべきだったか。矛盾してるな、俺。

また、どこか息苦しくなる。



「ちょっとどいて」


睨みつける女子をかき分け、扉へ向かう。


「人呼んだだけでえらい大騒ぎなもんやな」

西宮は、皮肉っぽくポツリと呟く。


「何か用?」

そう言うと、全てを見透かすような、絡め取るような目が俺を見据えた。挑発するようなその目とは裏腹に、表情は無に等しい。


「これ、鶴長くんのかな思って」


スッと差し出された手の中にあったのは、可愛げのないキーホルダー付きの鍵。

見覚えのあるそれは、俺がさり気なく今朝から探していた下駄箱の鍵だった。
どうやら昨日帰る際に靴に履き替えてから落としたらしい。