「なぁ鶴! 一週間前に転入してきた西宮さんって知ってる?」


登校してきて開口一番。自分の席に荷物を置くより先にするほど大切なことなのだろうか。

慌ただしく声を掛けられ、俺は机に伏せた顔を上げた。



「朝からうるせーよ」


口にしてから気付いたが、時はもう昼だった。

堂々と社長出勤を決め込み遅刻してきた友人、辻崎は、当然そんなことは気にせず落ち着かないように俺の隣の誰かの椅子に座る。



「で、西宮さんって知ってる!?」

「顔が近い、うるさい」

「そんなことはどうでもいいんだよ!」

「顔がうるさい」


全くもってどうでもいいなんてことはない。

寝起きに辻崎のどアップが迫ってくるこちらの身にもなって欲しい。不愉快なことこの上ない。

まるで特ダネを仕入れたようなキラキラとした目で鼻息を荒くさせる辻崎に、盛大なため息が溢れる。


「俺さ!  見ちゃったんだよ!」

「おーなんだーいってみろー」


無視すると面倒なのでとりあえず適当に相槌だけでも打っておく。


「正門近くのベンチ前で西宮さん告白されてた!
しかも相手はあの橋本先輩だぜ!」


どうでもいいの極みである。