今度こそ「じゃ」と軽く手を挙げ教室を後にする。

出来れば二度とこういった女子のいざこざは目にしたくないものだ。どうしても後味が悪い。



「…………」


後を追う足音は聞こえない。

大きく深呼吸した。

オレンジ色の空気を目いっぱい吸い込み、息を吹き返す。まるで、溺れているような心地だった。


「(しんど)」


慣れないことはするものじゃない。

グラウンドから響く運動部の掛け声を遮断するように、イヤホンを耳に捩じ込んだ。