遠く離れたここにいても、鳥肌が立つほどの魔力の込められた雄叫びが聞こえてきた。

「ジルコーったら人が悪いわね…あんな凄い切り札持ってるなら、早くに使ってくれればいいのに」

私は空中に浮遊しながら呟く。

…眼下には御影城跡。

時貞を桜花とジルコーに任せてここまで来たものの、正直不安はあった。

あれ程の強者相手に二人だけで大丈夫かどうか。

最悪、足止めが無理ならば逃げて欲しいとまで考えていたのだけれど、どうやら杞憂だったようだ。

「さてと…ここからは私達の番よ。修内太、いい? 」

私は手を繋いだまま宙ぶらりんになっている修内太に声をかける。

「……」

修内太は無言。

どうやら拗ねているらしかった。

「あんな敵前逃亡みたいな形で時貞を突破したって、少しも嬉しくねぇや」

「全くもう…」

私は呆れて溜息をついた。

修内太の気持ちもわからなくはない。

私だって、時貞を騙したような形でここまで来たのはあまり気分が良くない。

しかし、あのまま四人とも時貞に足止めされて作戦が失敗に終わる事を考えると、手段を選んでいる余裕はないのだ。