時貞さんの背後を取ろうとしたときの、先程の緊張感。

或いはそれにも勝るほどの張り詰めた空気が、場を支配します。

ジルコーと時貞さん。

共に『一撃必殺』を旨とする戦い方。

ならばこの戦いの結末も、ほんの一瞬でつくのは見えていました。

「参る!」

時貞さんにしてみれば、時間はかけていられません。

構えるジルコーに対し、初めて自分から仕掛けました。

攻城刀ほどの超重兵器を手にしていながら、信じられないほどの勢いで踏み出します!

両者の距離はおよそ3メートル。

時貞さんの踏み込みならば、一足飛びに詰められる間合い。

ならばこの一撃で決着がつく。

そう考えていたであろう時貞さんと、私は。

「甘ぇな、サムライ」

見事にジルコーに騙されました。

…結果から言うと、ジルコーの前傾姿勢はブラフでした。

彼は突進と見せかけてその場からは動かず。

「------------------------ッッ!!」

まるでお腹の底…内臓までも鷲掴みにされるような、凄まじい雄叫びを上げたんです。