あの巨大な攻城刀を竹刀のように軽々振るわれては、こちらもスピードで翻弄という訳にはいかない。

かと言ってパワーでも時貞はこちらを大きく上回る。

八方塞がりだ。

こちらには彼を上回るものは何もないかのように思えた。

恐らくは『畏怖』や『睡魔』などといった精神干渉系の魔術も、彼のような強固な精神力の持ち主には通用しないだろう。

だったら。

「修内太」

私は修内太に手を差し出した。

「?」

キョトンとしたまま、誘われるように私の手を握る修内太。

私は彼が手を握り締めたのを確認して。

「        」

高速詠唱と同時に空中に舞い上がった。

「な!?」

時貞が愕然とする。

…私が行使したのは『飛翔』の魔術だった。

力でもスピードでも勝てない相手に真っ向から勝負を挑む。

私はそんな武人ではない。

「悪く思わないでね」

私は上空から時貞にウインクして見せた。

「私は狡猾な魔女なの」