そういえば。

「桜花、長老を見なかった?」

私は部屋を見回す。

夕食が始まった辺りから、長老の姿が見当たらないのだ。

こういう賑やかな席は、誰よりも好きなのに。

「『ちょっと夜の散歩に出たいから窓開けてくれ』っつーから、外に出してやったぜ?」

一心不乱にスペアリブにかじりついていたジルコーが、不意に顔を上げて言った。

「外に?」

私は少し考える。

珍しい。

確かに長老は梟だから夜行性だけど、もう年をとっている事もあって使い魔としての役目を果たす時以外はあまり外出したがらない。

ましてや桜花やジルコーが家に来ているっていうのに。

今日に限って外出するなんてどういうものだろう。

「さぁな、だが…」

綺麗に平らげたスペアリブの骨を咥えたまま、ジルコーはニッと笑った。

「空っとぼけたツラして、あの爺さんなかなかのやり手かもな」