帰宅した私は、真っ先に長老にクリスからの依頼の事を話す。

普段は不真面目な態度が目に付くものの、こういう時私の一番の相談相手になってくれるのは長老だ。

先代デッドゲイト家当主の使い魔も務めた梟。

その膨大な知識と的確な判断力は、六百年生きてきた私でさえ助けられる事もある。

『長老』の名は伊達ではないのだ。

「フム…成程、百禍か…」

応接間の天井付近に渡したとまり木にとまったまま、長老は呟く。

「それほどまでに強力な怨念をまとった悪霊が、この街にいたとはの…今回ばかりは教会の連中の仕事ぶりを誉めてやらねばならんの」

確かに。

クリス達異端者殲滅専門職の危機管理には脱帽するしかない。

「で…メグ」

長老は私を見た。

「どうするつもりじゃ?クリスからの依頼を受けても、お前には大した旨味はあるまい…依頼をこなしたとて、本当にエクソシストの連中が見逃してくれるとは限らん」

「……」

ソファに座ったまま、私は黙っていた。