「相変わらず無礼な物言いだな」

私の背後、反対側のベンチ。

一人の青年が腰を下ろす。

長く伸ばした金髪を後ろでくくり、眼鏡をかけている。

身を包んでいるのは漆黒の修道服。

胸元では銀のロザリオが、街灯の光を反射していた。

…夕方の帰宅中の人混みには不似合いな神父。

その姿は否応なく道行く人々の視線を引き付ける。

「その格好何とかならないの?クリス。目立ってしょうがないわ」

私は振り向く事なく、背後の宿敵に呟いた。

クリスチャーノ・レオンフィールド。

悪魔、魔女、魔物といった教会側の定めた『異端者』を滅する事を目的とした、異端者殲滅専門職…通称エクソシストの青年。

つい先日も私を殲滅にやって来て、ギリギリの所まで追い詰められた。

精神干渉系魔術を無効化する眼鏡『瞳術封じ』と、聖油を駆使した祓魔術を使って異端者を葬り去る、私にとっては天敵中の天敵だ。