―――土曜日

朱莉のお母さんに頼まれ、
俺は朱莉以外誰もいない田嶋家へと踏み込む。



――――――――…


『朱莉の看病してくれないかな?』


2日前の朝に言われたその一言に俺は素直にうなずいた。
今週の土曜は休みだし、お見舞いくらいは行こうと思っていた。

でも看病まで…?


「実は今週の土曜にパパと温泉旅行に行くの…」

「は…?」

「宿も予約してキャンセルしたら勿体無いでしょ…?」



―――――――…


朱莉…お前はお父さんとお金に負けたぞ…



朱莉のお母さんは、俺が看病しに来てくれることは朱莉と…お父さんには言わなかったらしい。




……。

俺…そんなに顔に出てたか?




朱莉が好きだってこと。








そうじゃなきゃ、朱莉のお父さんに言わないだろう。

当の朱莉は気づいてないけどな。



でも…いいのか?


両親がいない好きな女の家で二人きりだぞ…?



『本当にいいんですか?』


俺はそれが訊けずに今日まで過ごした。