それでもボクはキミを想う


メインコーナーで、何台もドリフト車が過ぎていき、煙とタイヤの焼けた匂いの中で、“ヴォープシュ!!ヴォープシュ!!”と大きな音が段々近づいてきた。

『さぁ、そろそろ慎吾達が来る頃だよ。』

まゆちゃんの仲間の白石さんがそう教えてくれ、メインコーナーに目を向ければ、“ギャアアア!!”と大きな音を上げて始めに来たのは響だった。

響を先頭に仁と峰岸さんが続き、メインコーナーを芸術的ともいえるトリプルドリフトで駆け抜けると、順番に円書きや直ドリのパフォーマンスを三人で合わせ、その光景にギャラリーは湧いていた。

『さずが峰岸と一ノ瀬は完成度高いね。』

『ああ、藤崎も悪くはないが、しかしあの二人と走るとコンマ数秒のズレや数ミリのライン取りのミスも目立つな。』

『そうだね。
それとあの二人が派手だから、藤崎くん、もう少しがんばらないと全然目立たないよね!』

『アイツは元が“地味”なやっちゃやからなぁ。』

“目立たないよね?”と、白石さんがオブラートに包む様に馬場さんに話てくれていたのに、まゆちゃんは響の事をズバリ“地味”と言う言葉で片付けたのを聞き、我弟ながらオーラの弱さを不敏に感じた。