それでもボクはキミを想う


“はぁ…番号変えても何であん人から電話かかってくるんや?
ボクん事で何も知らんキミを巻き込んで、泣き顔見せられるんはごめんや…”

キミとせっかく一緒におれて近づいたと思うたのに、その電話のせいでボクは急に距離を感じてしもた。

ご飯食べた後、キミが学生時代に通った楽器屋があるから行きたい言うから寺町をぶらぶらしながら向かった。

『莉乃ちゃんは何できるん?』

『私はね、ピアノは習っていたんだけど、大学の時にバンド誘われて組んでギターしてたの。
で、ちょうど一ノ瀬さんに初めて会った頃にギター辞めた時で、今は家でピアノを弾いてる位かな?』

『なぁ、今度ボクにピアノ聞かせて?』

『いいよ。あんまり上手じゃないけどね。気持ちはいれるからね。』

私は貴方と約束した。

演奏曲はベートーヴェンの“月光のソナタ第一楽章”とすぐ決めた。

静の中に何か秘めた感じと、ほんとは第三楽章で陰がある激しい感じの方が貴方らしいなと思い聞いてほしいのだけど、今の私の親指と小指は、まだあの絡まりそうに速い曲にはついていかないのが現実なの。