それでもボクはキミを想う


結局貴方は車に乗るからとそそくさと元の服に着替えたから“お着物でぃと”はできなかったけど、私は桜子ちゃんお薦めの“千總”の京友禅小紋から、"鬼しぼちりめん"とも呼ばれる古代縮緬の縮みが大きくて重量感もある漆黒の地色の生地に大きく描かれた大輪の花々のそれらをより鮮やかに引き立たせていた柄の着物を選んだ。

そして四条河原町に戻り遅めの昼食を食べていた時にあなたのスマホが鳴った。

『ちょっと待ってな?』

『うん。気にしないで』

しかし、スマホを出ると一瞬で貴方の顔が曇り無言で“ピッ”と消した。

『どうしたの?』

『ああ、莉乃ちゃんは気にせんでええよ。』

そしてまた私の方を向き、何も無かった様に話始めたけど、私は何故か貴方の一瞬曇った顔が気になっていた。