それでもボクはキミを想う


『もうとっくに十二時回っとるから“今日”になってもたけど、何処が行きたい?』

『ん…、せっかくだから京都がいい。』

『せやなぁ…、ほな、無難やけど美味しいもん食べてぶらりと散策しよか?』

『あっ、葛切り食べたい。』

予定も決めたし、実はそろそろボク、お風呂入りたぁてしゃあなかったんや。
整備士しとるから仕事の後は汗だくの油まみれになるから、いつも終わったらすぐに入るんやけど、簡単にシャワーしただけやった。

『さぁてと…ボクちょっと部屋出るけどすぐ戻るさかいに気にせんと寛いどってな?』

『あっ…うん、ありがと。』

と言ったものの、この広いお部屋で一人でいるのも緊張するなぁ…と思いながらも、貴方の部屋にいるのが何だか夢の様に思えてた。私は車雑誌を借りて、内容はわからないからひたすら貴方や知ってる人見つけてはその記事を読んでいた。

暫くして戻って来た貴方は黒いTシャツに七分丈のパンツのラフな姿に、綺麗なサラサラの黒髪からシャンプーのいい臭いがした。

『おまたせや。
莉乃ちゃんも入ってくる?』

私も“入りたい”と言いかけたけど、よくよく考えたら、初めて貴方のお家にしかもとんでもない遅い時間に来て、いきなりお風呂借りるのも何だか変だ。

『一緒に入ったらよかっなぁ?』

なんて意地悪言うから、要らない妄想がよぎると急に恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしながら言葉が中々出なくて俯いた。
そんな私を見て、

『キミはまだお子様やね(笑)』

『わっ私…おっ、お子様じゃない…!!』

反論する私に貴方は“くすっ”と笑い、そのまま黙って手をひいてお風呂場まで案内してくれた。