それでもボクはキミを想う


『お父様、遅くまでお仕事してるんだね』

『ああ、あれはオヤジの趣味やねん。
もとはここ、オヤジの整備工場やったんをボクが変えたんや。』

緊張しながらお家にお邪魔したけど、とても広くてビックリした。
長い廊下を歩き二階の貴方の部屋へ向かう途中、襖が少し開いている部屋からさっきお会いしたお父様と髪の長い貴方に似ている女の人と二人が並んで笑ってる写真が飾ってあったのが見えた。

“あの写真の人…お母様なのかな?”

何だか覗き見した気分とお邪魔してから私と貴方以外に全く人の気配を感じなかったから聞けなかった。

貴方の部屋は一番奥にある和室で、余計なモノ一つ無くかなりスッキリしているのが、広い部屋を一層広くしていた。

『ここがボクの部屋。
何か飲むもん持ってくるからちょっと待っといてな?』

キッチンに向かいとりあえずお茶煎れて戻った。

『莉乃ちゃんは紅茶やんな?
いつも飲ませてもろとるからボクの煎れたん飲ましたるわ!これやけどな?』

ティーパックを上下させてる振りを見せたら“ありがと”言うて笑うとった。

そしてミルクティーの中に、蜂蜜をスプーンでひとすくい入れとったからクルクルと混ぜたカップを渡したら、一口飲んで

『美味しい♪蜂蜜はいってるの?』

って聞いてきた。

『あたり。甘くするんはお砂糖やなくて蜂蜜入れた方が好きなんや。
まだ受験生ん時におじぃがよぉ作ってくれたんや。』

貴方が煎れてくれた紅茶はほんのり甘い味がして、実は車から降りてからドキドキしっぱなしの私は、それを飲みホッと気持ちが安らいだ。