~憧れ~




久須本さんと浅井が行った後を僕も追いかけるように走りに行こうと車に乗った。

スタートラインまでの順番待ちをしていたら、何やら動きが騒がしくなり、運転席の窓を開ければ、警察が来た事を誰かが教えてくれた。

その瞬間に、僕は姉貴を置いてきぼりにして走りに行った事を後悔した。

悪かった!!姉貴!どうしよう…
あっ、久須本さんと浅井だ!!
ああっ、待ってよ!行ってしまった!!

駐車場からの出口も狭く、僕は詰まって中々動き出せない状態の中で、ただ焦るばかりで、少しイライラした。

『とりあえず先に姉貴に電話っと!』

渋滞して動かない為、携帯を取り出し、かけてみると、イヤホンから聞こえる無機質な声、

“お客様の電話は、電波に届かない所か…”

『姉貴!!何でこんな時に圏外の場所にいるんだ!!』

山の方にいる姉貴の携帯に繋がらない!!
何回も何回も僕はかけ続けた。

そのうち、駐車場からやっと出れたけど、上りも下りも大渋滞になっていた。

しばらく運転していると、浅井から連絡があった。

『おい響!!俺だ!
今、ギャラリーに着いて久須本さんが莉乃姉を探しに行ってる。
莉乃姉乗せたらそのまま逃げっから、いつものコンビニで落ち合おうぜ!!』

『ありがとう浅井。迷惑かけて悪い…
今、やっとスタート過ぎたとこで、かなりの渋滞だよ…
多分、散らしに来ただけと思うけど、今日はいつもより車多いよな?
この様子だと、検問やってっるかもしれないし、サイレンサー入れとこ。』

『やっべぇ!
久須本さんも俺も、直間だ!
検問やってないこと祈るぜ!』

『この状態で思う様に身動きとれないけど、なるべく早く合流できる様に行くよ。
浅井、今度お礼にたこ焼きを奢るから、姉貴のこと宜しく。』

『おおよっ、莉乃姉の事は任しとけって!
じゃ、今度“たこ焼き”よろしくなっ♪
じゃあなっ!』

『また後で!!』

“久須本さん、浅井ありがとう!
ああっ姉貴、早く見つかって!!”

浅井と話た後に、姉貴に電話しようとしたら携帯が鳴った。

『もしもし、響?私だけど、あのね…』

姉貴からの電話に僕はほっとした。

姉貴が何か言いかけてたけど、焦ってた僕はつい話しかけてしまった。

『置いてきぼりにしてごめん!
久須本さんに会えた?』

『えっ?久須本さんには会ってないけど?
どうしたの?』

『まだ会えてないの!!
今、久須本さんが姉貴の事を探してくれているんだよ!!一体何処にいるの?』

『あっごめん…
もうギャラリーにはいないんだ。
うーん…ここ何処だろ?
さっき走ってた人が、私、ギャラリーで1人だったから連れて逃げてくれたのよ。』

『そうなんだ!よかった…
じゃ、そこまで迎えに行くから、場所教えて?』

『わかった。
場所聞くから、ちょっと待ってね!』

“姉貴を連れて逃げてくれた親切人いたんだ…誰なんだろう?”

と思いながら、僕と姉貴は、外人墓地抜けてから先の二つ目の駐車場で待ち合わせした。

姉貴と連絡をついた事を浅井達に伝えなければ…

『確か浅井は、久須本さんが探してくれてるって言っていたな…?』

僕は久須本さんに電話した。

『すいません久須本さん、藤崎です。
はい、見つかりました。
外人墓地から二つ目の駐車場で待ち合わせしたので今、向かってます。
迷惑をかけてしまい申し訳ないです。』

『ああっ、わかったぜ藤崎、じゃあ俺もそちらへ行く。後でな!』