待ち合わせ場所の駐車場に近づくとローレルが見えた。

『あっ、あの一番細いのが弟なの。』

あの弱々しい子が弟くんの響くんかぁ…
なんや、赤黒ハチロクコンビの二人もおるんかいな?
ほな、弟くんは“Firstline”か?

“Firstline”いうんは、“Deadline”の予備軍。

“Firstline”から選ばれた子らだけが、いわゆる一軍の“Deadline”に入れる。

ボクみたいにどっこもチーム所属せんと、二軍の“Firstline”から上がらんと入ったんは、ほんま無いに等しいほど珍しい事らしい。
ボクにとったら興味無かった事やから、関係ないけどな。

まぁ、ツインドリの為に個々のチーム辞めて“Firstline”に入ったあん赤黒コンビも、次の大会で実績挙げて“Deadline”にくるはず…

ちょっと顔会わすんも面倒やと思て、待ち合わせの駐車場の手前に車寄せてキミを降ろした。

車から降りたキミは、わざわざボクの方にきてくれたからボクも車から降りた。

『あの…今日はありがとう…
弟、呼んでくるから、ちょっと待っててもらっていいかな?』

言うて呼びに行きよったキミの腕をとっさにボクはつかんどった。

もぉ少し二人でおりたかってん…

『仲間もいてるみたいやしええよ。』

ボクはいつも簡単に言える“さいなら”言う一言が、キミには出せんかった…

『…』

キミを少し引寄せて、頭を撫でた。

抱き締めたい衝動にかられながら、キミの名前も連絡先も聞かず、

『ボク…ここによぉ来とるから、またおいで。』

そう言い残して車に乗り、キミから離れて行った。