それでもボクはキミを想う


『ただいまぁ…』

『あっ!お帰りなさい!
お邪魔してます!』

家に帰ると、案の定、奥田さんがおった…

『いやぁ、邪魔ちゃうで!
うちもこんな可愛ええ娘がおったらなぁ。
桃ちゃんやったらいつでも大歓迎やで!』

鼻の下伸ばしてオヤジが答えとる。

(オヤジ!何なれなれしぃ桃ちゃん言うとんねん!!)

ボクは、情けないなぁ思いながら、ため息ついとった。

家を教えへんかったんは、男ばっかりの家族の中に女の子来たら、騒がれるんわかっとったから嫌やったんや。

学校も高専は共学やねんけど、機会科やから男ばっかり。
通学ん時とかは、他の女子高の娘とか来てくれて一応結構モテるんやで!

だから、それなりに経験もある。

まぁ、女友達おっても特定の娘を作らんかったから彼女はまだおらんかったけど…

『仁、奥田さんがわざわざお礼に来てくれはって、これ頂いたで。』

おじぃにそう聞いて

『おおきに。
遅うなったらあかんから、帰り。
送るわ。』

残念がってるオヤジを横目にそう言うて、ボクはさっさと奥田さんを家からだした。
 
『何回も足運ばせさせてごめんな…』

『あっ、いいえ…
こちらこそ何回もごめんなさい。
それと、この間は本当にありがとうございました。
一ノ瀬さん車屋さんだったんですね。』

『んー、オヤジがしとるねん。
腕は確かやで!
ボクは、まだまだやけどな(笑)』

結局あの日、奥田さんは怒られたらしい。

後、ボクんとこが車屋しとるん知っとったら“ パパに頼んだのに! ”とも言うとった。

ほんで車は今、ディーラーに入院中らしい。

まぁ、ディーラーに入っても、実はボクんとこが板金や塗装などの下請け会社としてディーラーと提携しとるから、多分明日位に、奥田さんの車がうちに回ってくるやろと思うとった。

そしてたわいもない話しながら奥田さんを送った。 
大人しいて清楚に見えたのに、意外にも積極的なアプローチの奥田さん。
特に好きな娘もおらんかったから付き合うことにした。

ボクに初めて特定の女の子である“ 彼女 ”ができた瞬間や。