それでもボクはキミを想う


もうすぐ卒業やという、学校が休みの日の夕方に、ボクはコンビニバイトの帰りで、細い抜け道の中を車走らせとった途中で、止まって道ふさいでハザードつけとる車を見つけた。

その車の横でしゃがみこんでる女の子を見つけた。

奥田さんと会うたんは、そん時やった。

ボクは車から降り、

『こんなとこで道ふさいどったらボク突っ込むで?どないしたん?』

と聞いたった。

その声を聞いたとたん、女の子は一瞬ギョッとしたけど、それからボクを見てほっとしたのか、ちょっと泣きそうな顔で、
“ パパに怒られてしまう…”
言うて助手席の方へ周りそしてフロントタイヤの方を黙って指差した。

あー、ここの大きな岩んとこ曲がり損ねてこの運転席側のバンパー擦ったんやなぁ?
そんでびっくりしてハンドル切ったんやろなぁ?
まぁ、曲がりにくいからここでバンパー擦っとるのはよぉあるみたいやけど…
ちょっとやなくてここまでこの縁石の角に当ててもて助手席のフロントタイヤパンクまでさせてもてるやん!
ホイールもえらい傷つけてもとる。
足周りは…大丈夫そうやねっと。
取り敢えず車動かさんと、なんぼ車通りが少ないからいうてもヤバイやろ…

車の傷ついてるとこ分析しながらそう思うた。

『ボクもここ通りたいし、取り敢えず動けるようにしたるわ。
替えのタイヤ積んどるやろ?』

そう声をかけ、ボクは自分の車に積んでる工具を出してきて、スペアタイヤを探した。

“ なにもわかんない… ”
言うてオドオドばかりしとる女の子に、少しあきれながらタイヤ交換などの作業を続けた。 
  
只今作業中…
まぁ、ボクには興味なかったけど、沈黙が嫌やったんか、なんでこうなったか話してきた。

『いつもは自転車で、ここ抜けて帰るの。
免許取って嬉しく、車乗りたくて…
でも、車通り多いとまだ怖くて…
いつも通ってる道がこんなに狭いと思ってなかったから………

もう、どうしたらいいかわからなくて…』

しかしなぁ、よりによって何でこんな細い道選んだんや…

女の子の乗っとった車は日産のシーマという初心者マークの似合わない大きなセダンの高級車やった。

『よっしゃ、これで大丈夫や!
しかし、スペアタイヤやから早く変えてな!
バンパーは修理だしや。』

『あっ、ありがとう…。
私、奥田桃。
お礼したいので、名前と連絡先教えてもらえませんか?』

『一ノ瀬仁。
お礼なんてええから。』

そぉ言うてから、一瞬、オヤジの整備工場でも宣伝したろか思うたけど、ディラーに入れるか?と思うて止めといた。

それでもボクにどうしても連絡先教えてほしい言うて聞いてくるから取り敢えずバイト先を言うといた。