それでもボクはキミを想う


ふらふらしながら歩いたせいで、“ドンッ”と誰かにぶつかった。

『あっごめんな…さい』

『大丈夫か…?』

顔を上げると悠人だった。
久々に悠人の顔を見た驚きで、急に酔いも冷めてしまった。

『あ…うん、ごめんね。
じゃぁ…』

そう言いかけると、悠人は私に

『ちょっと二人で話せねぇか?』

と言い、居酒屋の外に出て、近くの階段に座った。

『あっ、ちょっとここで待ってろよ』

そう言うと私を置いて悠人は階段を降りていった。

“ふーっ…私、何で緊張してるんだ(笑)”
なんて考えてると、

『悪りぃ、待たしたな。
莉乃はこれだったよな?』

と言って私が珈琲を飲めない事を覚えてくれていて、缶に入った冷たいミルクティーを渡してくれた。

『ありがとう。
ねぇ…彼女…、一人にしてて大丈夫なの?』

『ああ…すぐ戻る。
その前に話したかったんだ…』

『どうしたの?』

『なぁ…バンド辞めるの…俺が原因なのか?
あんな気まずい別れ方して悪かった…』

『 えっ!?
スッゴい可笑しいんだけど?
自惚れしすぎだよ!』

『だぁっ、そんなに笑わなくてもいいだろ!!
莉乃が辞めちまうの聞いて…
何か…気になってよ…』

『違うよ。
あのね、最後のあの曲、遥香先輩の歌詞に私が曲を書いたのよ。
あの曲が出来上がった時に、私の音楽は終わったって感じた。
だからなの。
あんな感触…初めてだったよ。』

『そうか…
いい曲だよな!
あの曲…莉乃が作ったのか…
何か辞めちまうのもったいないな!
俺、お前の音楽は今でも好きだぜ。』

『フフッ、ありがとう。
頑張ってね、悠人は!
じゃ、そろそろ戻るね。
これも、ありがとうね。』

『ああ…お前もな!
じゃあな!』

案外普通に話せたな?と、すっかり悠人の事もふっきれていて内心ほっとした自分がいた。